人間関係はこころを苦しくも穏やかにもする

今までの人生で、人間関係に全く悩まなかった人は少ないと思います。私たちは他者と協力しながら生きているので、悩みのほとんどが人間関係とつながっていると言っても過言ではありません。
つわりでしんどい時に、つわりの大変さを十分に理解していない家族から「妊娠は病気じゃないから、もう少し動いたらどう?」と言われたら、「体調が悪いのをわかってくれていないんだ」と怒りや悲しみを感じることもあると思います。
そして、その怒りや悲しみの気持ちから、家族に自分のことを話すのが嫌になり、家族との関係がギスギスすることもあるかもしれません。
逆に、人間関係がこころの癒しとなることもあります。
職場で嫌なことがあってつらい気持ちになっても、家族が理解し、味方でいてくれるとつらい気持ちが和らいだ経験もあるでしょう。
このように、周りの人(特に『重要な他者』)との関係と気持ちは密接に関わっているので、あなたが穏やかな気持ちでいられるように、周りの人たちと心地良い関係を築いていけるようになると良いですね。

そういえば、職場で嫌なことがあった時、パートナーが愚痴を聞いてくれていたな。それが私の気持ちの支えになっていたのね。
周りの人と心地良い関係を築くコツ

対人関係カウンセリング(IPC)では、人間関係に悩んでいる時に考えるポイントが2つあります。
1.『期待』と『期待のズレ』というIPCの考え方
誰かと一緒に過ごす時には、知らず知らずのうちに、相手に対して「〇〇してほしい/〇〇してほしくない」と何かを求めているものです。
しかし、多くの人は相手に対して「何を求めているか」をあまり意識することなく普段の生活を過ごしています。
対人関係カウンセリング(IPC)では、相手に対して「〇〇してほしい/〇〇してほしくない」と求める気持ちを、相手に対する『期待』と呼び、積極的に意識していきます。
相手に対する『期待』を意識していくと、私たちは、パートナー、家族、友人という身近な人たちだけではなく、身近ではない人に対しても『期待』を持っていることが分かります。
例えば、スーパーのレジ列に並んでいない人に対して、私たちは「きちんと列に並んでほしい」という期待を無意識に持っているのではないでしょうか。
そして『期待』は身近な人になればなるほど強く抱いています。
例えば職場でつらいことがあった時、パートナーや親友には「つらい気持ちをわかってほしい」「私の味方になってほしい」と期待する一方で、職場の同僚にはそれほど強く期待していないことに気付くでしょう。

私の場合は、妊娠して心細いから「パートナーに早く帰ってきてほしい」と思うようになったな。これを『期待』って言うのね。あと、今までは出来ていた気遣いをする余裕がないから義母に「突撃訪問はやめてほしい」と思っている…これも『期待』ってことかな。
次に、対人関係カウンセリング(IPC)の考え方『期待のズレ』の説明をします。
対人関係カウンセリング(IPC)では、人間関係に悩んでいる時には、自分と相手との間に何らかの『期待のズレ』があると考えます。
『期待のズレ』とは、自分が相手に「〇〇してほしい」気持ちと、相手が自分に「〇〇してほしい」気持ちとのすれ違いです。
例えば「パートナーに早く帰ってきてほしい」と伝えたけれど帰ってきてもらえなかった場合、まずはパートナーとの間に期待のズレがないか考えてみましょう。
自分はパートナーに対して「妊娠して心細いから、早く帰ってきてほしい」という期待がある一方、パートナーが自分に対して「仕事が山積みで早く帰ることはできないから、それを分かってほしい」という期待があったとしたら、これが『期待のズレ』です。
このように、どのような『期待のズレ』があるのかが分かれば、次に解決に向けて、そのズレを二人にとって折り合いがつくところまで修正していくことができます。
2.コミュニケーションの工夫
人間関係に悩んでいる時には、自分と相手との間にコミュニケーションのすれ違いがある可能性も考えます。
私たちは育ってきた環境やこれまでの経験の中で、自分なりのコミュニケーションスタイルを身に着けてきました。
どのようなコミュニケーションスタイルであっても、お互いに不都合がない場合は問題ないです。ただ、相手との関係に悩んだ時には、お互いのコミュニケーションスタイルの違いによって、自分の気持ちが相手に十分に伝わっていない可能性を考えましょう。
例えば、つわりでしんどいのにパートナーが皿洗いを手伝ってくれなくて悩んでいたとします。その時に、パートナーとの間に「コミュニケーションのすれ違い」がないか考えてみます。
自分の中では「つわりでしんどいから、パートナーに皿洗いをしてほしい」という期待があっても、場の空気を悪くしないために「今日は洗うお皿の量が多いな」とだけ伝える言葉不足のコミュニケーションスタイルをとることもあるかもしれません。
一方、パートナーは言葉通りに受け取るコミュニケーションスタイルだとしたら、残念ながらそのコミュニケーションではパートナーに対する期待は十分に伝わりません。

私も同じような言い方したことがあるな。この言い方では伝わっていなかった可能性があるのね。
コミュニケーションは試行錯誤の繰り返しです。何度も練習が必要になるでしょうし、慣れるまで時間もかかると思います。
あなたが本当に伝えたい気持ちを相手が理解できるように伝えるために、相手のコミュニケーションスタイルを知り、あなたらしいコミュニケーション方法を見つけていきましょう。


